子供が風邪をひき、しばらく看病三昧でした。

普段は多少鼻水が出ても熱までは出さない子なのですが、今回は約1年ぶりの高熱。

熱が出てもケロッとしているときがあるのですが、今回はかなり辛そうでした(もう解熱しています)。

ウイルスをやっつけるためには熱が大切なのですが、やはり辛そうな我が子を見ると代わってあげたくてもどかしくなります。

以前の「インフルエンザと歯周病」というタイトルのブログを書きましたが、やはりまだ免疫が十分でない小さい子供は風邪をひきますね。

当たり前のことのなのですが、普段とても元気な子供の姿に慣れて忘れてしまっていました。

 

さて、今回は「免疫」のお話です。

 

「免疫」は体内に入ってきた細菌やウイルスなどの異物を攻撃、排除する体の仕組みです。

実は私、大学生時代のカリキュラムで免疫学の研究室にしばらく出入りしていました。

なので少しマニアックになるため、ここからしばらく複雑なお話です。次の段落は飛ばしていただいてもOKです。

 

細菌やウイルスを細胞が直接攻撃する「細胞性免疫」と、細菌やウイルスをそれぞれに適した「抗体」が狙い撃ちする「液性免疫」とがあります。

この、良く聞くけれどイマイチ分かりにくい「抗体」について説明しますね。

まず体内に侵入した異物を免疫細胞が取り込んでから、異物に含まれるタンパク質=「抗原」の情報を他の特殊な免疫細胞(B細胞といいます)に渡します。

情報を受け取ったB細胞は、抗原にぴったり適合する武器である「抗体」を作製し、異物に向かって抗体を飛ばして攻撃します。

このB細胞による抗体の仕組みはとても良くできていて、一度認識した抗原を覚えるので同じ異物が再び体内に入った際にすぐに抗体を作って攻撃してくれます。

この仕組みを「獲得免疫」と言い、予防接種で免疫が得られるのはこの仕組みのおかげです(厳密に言うと生ワクチンの場合は細胞性免疫の仕組みも関わってきます)。

 

さて本題に戻りましょう。

予防接種の病原体に限らず、私たちの周りには多くの細菌やウイルスが存在しています。

皮膚やお口の中、腸の中にも常在菌がいますし、納豆やヨーグルトは菌による発酵によってできています。

虫歯や歯種病の原因は細菌ですし、1年中風邪をひく可能性があります。

人間にとっていい菌もいれば悪い菌もいます。

 

歯科医院の器具などは高いレベルでの清潔が求められるため、滅菌(=いい菌も悪い菌もすべて死滅、除去する)や消毒(=病気の原因になる悪い菌を死滅、除去する)を行います。

ご家庭でも消毒を行うことは多いと思います。我が家にも消毒用のアルコールが置いてあります。

ただ、過剰な消毒や除菌(=物理的に菌を減らすこと)を行った環境では、上述の獲得免疫を得る機会も減り、免疫系の細胞が活性化しにくいといえます。

スポーツに例えて言うなら、免疫系の細胞の練習やウォーミングアップができていない状態です。

一度も練習したことがないスポーツを、ウォーミングアップもせずに成功する人は決して多くないですよね?

免疫についても同じことが言えると思います。

 

清潔はもちろん大切ですが、菌などの異物にある程度触れておくことで免疫系を活性化することも重要だと考えられています。

もちろん前提として、規則正しい生活やバランスの良い食事、適度な運動によって健康な体を作ることが肝要です(歯磨きや手洗いうがいもお忘れなく)。

子供が泥だらけで遊ぶ、これが元気の秘訣の1つなのかもしれませんね。

…泥汚れ、親としては洗濯が辛いんですけどね(涙)

 

松原歌奈子