お子さんの矯正治療、気になっている保護者の方はたくさんおられると思います。
「そもそも矯正するべきなのか?」「いつ始めればいいのか?」疑問はいろいろですよね。
ブログでスパーーーンとお答えできればよいのですが、私の回答は「個人差が大きいので歯科医院で矯正医とよく相談してから決めた方がいいと思います」です・・・すべてのお子さんに合うような万能なお答えは残念ながらないんですよね。
例えば受け口のお子さん。
ご家族にも受け口の方がおられるような骨格的な素因のあるお子さんの場合、成長自体を止めることは難しいため、幼児期の治療を積極的に行っても大人になってからの矯正治療(手術を含む場合もあり)が必要になる可能性があります。
その場合、よかれと思って行った幼児期の治療が逆効果になることもあり得るので、あえて積極的な治療は行わずに経過観察を行うことがあります。
骨格には問題がないけれど唇を咬む癖があったりして上下の前歯がすれ違ってしまい、そのまま受け口になってしまったお子さんの場合、矯正装置や訓練で癖を抑えたり歯の位置に影響する筋肉のコントロールを行うことで咬み合わせが改善し、その後の成長をスムーズにしてあげられる可能性があります。
次に前歯がガタガタに生えてきたお子さんの場合。
年長さんから小学校1年生くらいで下の前歯が生え変わった時に歯がねじれて生えてきて、驚いて受診される患者さんがおられます。
多くの保護者さんからいただく質問は、「このねじれは自然に治る?それとも矯正治療が必要?」「すぐ治療を始めないと間に合わないの?いつから始めるの?」
その際にまず私が考えるのは「このガタガタはなぜ起こったのか?」です。
歯が大きい?歯列が狭い?口呼吸をしていない?指しゃぶりや爪咬みの癖はない?
明らかに歯のサイズが大きいなら、子供の時に歯列を無理に横や前に広げてとりあえず前歯を整えても、将来生え変わりが進むにつれてガタガタは再び現れます。
無理に広げた歯列では歯への負担は大きくなる上、結局大人になってから歯を抜いての矯正治療が必要になり、幼児期の治療が逆効果になる上に治療期間だけがいたずらに延びてしまう可能性もあります。
こういった場合、セルフケアをしっかり行って虫歯を作らないようにしたうえで成長観察を行い、成長が落ち着いた時期に抜歯して矯正治療した方が治療期間も短く、根本解決に繋がることがあります。
(もちろん可能な限り抜歯は避けたいですが、歯列・咬合・口元のバランス等のさまざまな要因から抜歯が最適な場合もあります)
明らかに歯列が狭い場合、子供のうちなら骨格にアプローチして歯列そのものを拡大して改善することができます。
これは大人になってからはできない治療です。
口呼吸や指しゃぶりや爪咬みなどの悪習癖は歯列にはいい影響は与えません。
可能なら早くに悪い癖をやめることで、将来の歯列不正を予防することができます。
ただし、気持ちを落ち着かせるのに癖が欠かせず、いきなり癖をやめさせることで不安定になるお子さんや、年齢的にすぐには癖をやめられないお子さんもいます。
とても長くなりましたが、顔も身体も癖も歯並びもみんな違うお子さん達、すぐに矯正治療すべきか否かはやはり矯正医に相談し、場合によっては精密な検査を受けた上で判断するのが安全だと思います。
相談のみで経過観察になる場合、相談して検査までしたけれど経過観察になる場合、相談して検査してすぐ治療になる場合、いろいろあります。
また、矯正医によっては診断・治療の考え方が違うことも多いです。
矯正治療は登山のようなもので、登山者(矯正医)は皆同じ山頂(患者さんの機能的で美しい歯列・咬合)を目指しますが、登山口(治療開始時期)も登山道(治療方針)もそれぞれの考えで変わってきます。
山(患者さんの歯列・咬合)によってはなだらかな道をずーっと登り続ける(幼児期から成人までずっと何らかの矯正治療を行う)場合も、急傾斜の道を一気に登る(幼児期は治療せず、成長が済んでから一気に矯正治療する)場合もあるのです。
当院もですが、矯正相談は無料で行っている歯科医院が多くあります。
せっかくの無料相談ですから、気になることがあったらお気軽にご相談されることをおすすめします。
ちなみに大人の場合ですが、歯槽骨(歯が生えている骨)の状態が良ければいつでも矯正治療を受けるできます。
もちろん若い方が代謝がよいので歯が動きやすいのですが、10代でなくても矯正治療は可能ですので、気になる場合はお気軽にご相談ください。
松原歌奈子