夏休みが終わりましたね。
なんとブログを3か月以上放置しておりました。
7月に下書きまではしていたブログのアップもしておらず、自分の継続性のなさを痛感中です。
下書きまでしていた分がもったいないのでアップします…もったいないというのも変な言い方ですが。
矯正治療は「歯を動かす」治療ですが、その本態は「歯を取り巻く骨(歯槽骨)の形を変える」治療になります。
歯の見える部分を歯冠、歯ぐきに隠れて見えない部分を歯根と言います。
歯根の周りには歯槽骨という骨が取り巻いており、その2つを歯根膜という主に靭帯から構成される組織が繋いでいます。
この歯根膜の幅は約0.2mm、そこには靭帯や血管だけではなく、さまざまな細胞が存在しています。
例えば、咀嚼する食べ物の硬さを感知する触覚細胞、骨に変化する骨芽細胞、骨を吸収する破骨細胞などです。
矯正治療は、この骨芽細胞と破骨細胞を利用して骨の形を変えることで歯を動かしているのです。
怪我をするとかさぶたが出来てやがて元通りになりますね。
このように人体は何か変化が起きた時に元通りに戻ろうとします。この性質を「恒常性」「ホメオスタシス」と言います。
歯に力がかかって歯が動いたとき、進む方向の前方の歯根膜は狭くなり、後方の歯根膜は広くなります。
矯正装置がついていなければそのまま元の位置に戻って終わりですが、矯正装置がついている場合は元に戻ることができません。
それでも何とか元の歯根膜のスペースを維持したい人体は何をするかというと、狭くなった側は破骨細胞によって骨を溶かしてスペースを広くし、広くなった側は骨芽細胞によって骨を新たに作ってスペースを狭くしようとします。
この骨の代謝の結果、元の歯根膜のスペースが維持され、かつ歯の位置が移動していきます。
これが矯正治療を行っている際に歯根周辺で起きている変化です。
歯は基本的に一度失われると元には戻らない臓器ですが、骨は生まれて死ぬまで常に破壊と再生を繰り返す臓器ですので、歯と骨に同時に負担がかかった場合に骨の方を優先的に変化させるのでしょうね(歯根が吸収される場合もあります)。
人体は本当に不思議です。
「矯正治療は痛い」というイメージが強いと思いますが、この痛みにも先述した骨の代謝が関わっています。
骨を溶かす破骨細胞が活動する際には必ず炎症が起きます。
活発に活動する破骨細胞が出す物質が炎症を引き起こす物質と共通しているからです。
そのため、矯正治療中には歯根に響くような炎症に伴う痛みが発生するのです。
私も経験がありますが、これはなかなか痛いです。特に食事の時に痛みが強くなります。
ただし、この痛みは期間限定です。
破骨細胞が活発な期間は大体2~3日程度なので、個人差はありますが、痛みのピークは大体2~3日程度で、その後痛みは徐々に減少し、長くても1週間程度でおさまります。
子供さんの場合は治療翌日に痛みを訴えても、翌々日にはもうおさまっていたりします。
ほかにも装置の引っ掛かりによる口内炎の痛みもあるのですが、これはまた別のお話です(地味に辛いのですけどね…)。
「矯正は痛くて怖い」というイメージをお持ちの方は多いかと思います。
確かに痛いです。それは否定できません(痛みの少ない方法はあります)。
ですが痛みはあくまで期間限定、1か月のうちの3日程度しか続きません。
最初は経験のない痛みに驚かれる患者さんが多いですが、みなさん慣れてしまわれます。
イメージだけで想像しているとどんどん怖くなってしまってチャレンジできないこともありますので、歯並びが気になる場合は一度矯正専門医にご相談されてみることをお勧めいたします。
松原歌奈子