ご無沙汰しております、副院長の松原歌奈子です。
6月4日は6(む)4(し)にちなんで日本歯科医師会が定めた「虫歯予防デー」です。
新学期も落ち着き、この頃に学校歯科検診を受けられるお子さんも多いのではないでしょうか?
さてタイトルの「学校歯科検診で虫歯と言われた!」なのですが、歯科医院で定期検診を受けているのに学校検診で虫歯と言われたり、虫歯の治療が終わった直後にまた虫歯と言われたりして戸惑われるお子さんや保護者さんをお見かけすることがあります。
これは定期検診をしている歯科医師が虫歯を見落としていたり学校歯科検診を担当した歯科医師がやたら厳しいから…というわけではありません(100%ではないかもしれませんが)。
学校歯科検診はあくまでスクリーニング検査=ふるい分け検査であって精密検査ではないことと、学校歯科検診と歯科医院での環境に大きな違いがあることが原因で、学校歯科検診と歯科医院での定期検診での虫歯の有無に差が出るのです。
学校歯科検診と歯科医院での定期検診での環境の違いは
(1)時間
学校検診は時間が限られるため、1人1~2分でチェックします。
歯科医院での検診では1人30分程度の時間をかけ、丁寧に検査していきます。
(2)体勢とライト・エアーシリンジの有無
学校検診では歯科医師と生徒が向かい合ってチェックをします。また歯科医院の様な明るいライトはなく(ヘッドライトは持参しますが)暗いお口の中を診ることになり、エアーシリンジによって歯を乾かすこともできないので唾液の付いた状態でのチェックになります。
歯科医院では歯科用チェアーに横になってもらった患者さんのお口の中を明るいライトで照らし、エアーシリンジや探針などの器具を用いて丁寧に検査します。
(3)レントゲンの有無
学校検診でレントゲンを撮影することはありません。結果、硬い歯の中の状態を詳しく診ることができません。
歯科医院では歯が疑われる場合レントゲンを撮影し、歯の内部を観察することで正確に診断することができます。
(4)専門的クリーニングの有無
学校検診では歯磨きを忘れてしまった生徒さんもおられます。食べ物の残りや着色、歯石が邪魔をして正確な診断ができない可能性が高くなります。
歯科医院では歯科医師・歯科衛生士による専門的なクリーニングを行って、汚れを取り除いてから検査を行うので、正確な診断が可能です。
このような環境の違いとふるい分け検査であるという観点から、学校検診では虫歯が疑わしいと思われた場合は(たとえそれが食べかすによる着色であっても)高い確率で虫歯とチェックされます。
そうしなければ、その生徒さんが歯科医院で検査を受ける機会を逃してしまうからです。
ですので、学校歯科検診で虫歯があると指摘された場合、必ず治療が必要になるわけではないのですが、歯科医院での検診を受けることをお勧めします。
たまたま食べかすなどで着色していた場合やごく初期の虫歯になり始めの歯の場合などは、クリーニングと歯磨き指導、フッ化物塗布などのみで治療が終わり、削って詰める治療が必要ない可能性があります。
それならラッキー!ですし、もし虫歯があったとしても、深く進行する前に治療が受けられれば、神経を抜いたり被せ物をしないで済む可能性があります。
また、前述の学校検診の環境から、残念ながら歯科医師が虫歯を見落としてしまう可能性もあります。
「専門家の癖にけしからん!」とのお叱りを受けてしまいそうですが、正確な診断を行うにはやはり環境を整える必要があるのです。
そのため、学校歯科検診で虫歯無しと言われたお子さんも「じゃあ安心。何もしなくていいね!」と考えずに、定期的な歯科医院での検診を受けられることをお勧めします。
当院も6月に近隣の学校歯科検診に伺います。
限られた環境の中ではありますが、可能な限り見落としのないよう、しっかり検診をさせて頂きます。
ちなみにうちの子供は奥歯に着色がありまして…(歯科医師失格のお叱りを受けそう)おそらく幼稚園での歯科検診でひっかかると思います。
毎日のクリーニングとフッ化物洗口を行っているので、そのまま経過を観察することになりそうです。
松原歌奈子