先日、子供の3歳児健診に行ってきました。

慣れない場所や初対面の方には気後れして私の後ろに隠れることもある子なので、挨拶や受け応えができるかなぁと少し心配していましたが、蓋を開けてみると当たり前のように健診をこなしていく姿に驚かされました。

子供って本当にあっという間に成長しますね。

子の成長を嬉しく思う一方で、赤ちゃん時代が懐かしく思われたり…勝手なもんです(笑)

 

前置きが長くなりましたが、そろそろ歯科医院のブログらしく歯の話にいきましょう。

 

3歳児健診の検査には歯科の診察も含まれています。

診察内容は、乳歯の数と形態、歯垢が付いているか、虫歯の有無や数、歯並びやかみ合わせのチェック、唇や歯ぐき、舌、粘膜の観察などです。

さらに問診から歯磨きの習慣ができているかや虫歯や歯並びへのリスクになる生活習慣の有無を調べていきます。

 

ウチの子は虫歯はなく、歯並びやかみ合わせの指摘もありませんでした。

しかし!生活習慣でご指摘をいただきました…仰る通りで、反省しきりです。

ウチの子、オレンジジュースが好きなんです。

それで朝食の時によく出すので、ジュースの回数が多いんですよね。

オレンジジュースは歯垢の原料となる糖類を多く含むうえに酸性度の強い飲料です(pH3~4程度)。

歯はお口の中がpH5.4以下になると溶けると言われています。

そのため、オレンジジュースは理論上は歯を溶かしてしまう飲料なんです。

 

と言っても水やお茶やコーヒーや牛乳以外、たいていのジュースや清涼飲料水はpH5.4以下の飲料です。

歯や骨を溶かすことで有名(?)なコーラはpH2程度(胃酸のpHと同程度)。

世の中には歯を溶かしうる飲料が溢れています。

それでは全員が虫歯になるかというと、もちろん違います。

 

身体には恒常性(ホメオスタシス)を保つ機能があります。分かりやすく言うと、元通りに戻ろうとする働きです。

病気になっても健康に戻る、怪我をしても治る、こんなイメージですね。

お口の中にも恒常性を保つ仕組みがあり、担っているのが「唾液」です。

 

唾液には、飲食物によって酸性に傾いた口の中を中性に戻す「緩衝能」の役割と、溶けて失われたカルシウムを歯に供給する役割と、飲食物を物理的に洗い流す役割があります。

梅干しやレモンのような酸っぱい食べ物を食べると唾液が多く出るのはそのためです(酸っぱい食べ物を想像しただけで唾液が出るのは条件反射ですね)

酸っぱい食べ物は健康には良くても、歯のみに着目すると良くないんですね。

だから唾液をたくさん出して歯を守るのです。

 

唾液の緩衝能は誰もが持つ機能ですが、強さには個人差があります。

緩衝能が強い唾液の人は比較的虫歯になりにくく、緩衝能が弱い唾液の人は比較的虫歯になりやすいと言えます。

ちなみに自分の唾液の機能を知りたい方には簡単に調べるキットがあります。

 

この「唾液」とともに歯を守ってくれる、それが「歯のお手入れ」です。

ご自宅での毎日の歯磨きや歯間ブラシ、フロスによるお手入れと、定期的な歯科医院でのメンテナンスが歯のお手入れに相当します。

歯によくないと分かっていてもジュースを飲んでしまう、子供に飲ませてしまう。

歯科医師の私もやってしまっていました…

でも美味しい物は気持ちを豊かにしてくれますよね。

ストイックに食事制限するのも一つの方法ですが、よく噛んで唾液を出して、しっかり歯のお手入れして、美味しい物を美味しくいただくのもよいのではないでしょうか?

美味しく食べるには健康な歯が必要ですしね。

 

松原歌奈子